Vol.2
右手の山は尾根近くまで木が倒され、山の斜面には切り株だけが整然と並んでいる。
岩が剥き出して荒れ果てた禿山は、まだ住んでいる民家の裏手まで迫り、今にも民家を飲み込もうとしている。
母屋と崩れかけた土蔵は、山に飲み込まれる前にダム建設の為に跡形もなく壊されてしまうのだろうか。
この民家の裏山には、ブルトーザーで削り取られた道が痛々しい傷跡を山肌にくっきりと残している。
私は、禿山の中腹にある高台に登ってみた。
ブルトーザーで削り取られて造られた道は、かなりの急勾配である。
道の左側は、皆伐のために土石流でも起きたのか深く切れ込んだ谷となり、山の上の方まで筋となって続いていた。
高台はすべての木が切り倒され、僅か奥の方に数本の杉の木が残されて立っているだけである。
以前は、大きな木が生い茂り鬱蒼とした場所であったのだろう。
付近には伐採された枝が散乱し、切り株の間を縫うようにしてその場所に行ってみた。
そこには、迫りくる禿山を背にして僅かばかりの狭い原っぱがあり、数基の墓石が村を睨むようにひっそりと立っていた。
墓石の花台には、何時ごろ供えられたのか枯れきった花が数本刺されていた。
そして、切り残された数本の杉の木が申し訳なさそうに山風に揺れながら古い墓石に影を落としていた。