Vol.4

粟沢口より少し行くと曲がりくねった道を挟んで両側に開けた場所がある。
この辺からは背丈もある枯れ草が一面を覆って枯野と化している。
所々には、枯れ草に埋もれながらも田んぼの畦跡が田を割るように残っている。
南摩川沿いの土手付近は山の陰となり、枯れ草に付いた夜露が凍って霧氷となって岩だらけの尾根から射し込む陽にキラキラと輝いている。
山際の裸木も霧氷に包まれ、枝の先までもがくっきりと山陰に映えている。
時折流れる谷風は、その光り輝く霧氷をキラキラと輝きながら降り落としている。
この枯野には、廃墟となった民家が一軒だけ取り残されて建っている。
そして、所々には離村した屋敷跡があり、コンクリートの基礎だけが残されて往時を偲ばせている。



南摩川に掛かる小さな橋を渡ると、大きなクランクとなる。
道の左手は、杉山の際まで枯れきった背丈もあるほどのブタクサに覆われている。
丁度、クランクの向かい角に綺麗に整地された屋敷跡がある。
昨年十一月の頃、この民家が壊されて行くのを通りがかりに見た。
この民家は二階建ての比較的新しい住まいであったと思う。
ダンプカーとアームの先に爪の付いた重機が入り、家財道具が運び出されて空っぽとなっていた住まいが、解体業者の手で容赦なく取り壊されていく。
そして、解体され廃材となった梁や柱が手際よくトラックに積み込まれていく。
この屋敷のすぐ脇には、小高く盛られた古い塚(墓)がある。
地下で静かに眠る祖先たちはこの光景を無念の思いで見ていたのであろうか。
何故か、私にはこの光景が無残に思えてならなかった。