早春(春)

自分の殻に「じぃ-っ」と閉じこもり長かった「冬」からの脱皮。
なにもかもが歓喜にあふれ、躍動の季節の訪れである。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

私の心は、早春の岸辺の枯れ葦の中にいる。
「そぉ-っ」と竿を出す。
水面を這う目印を目で追いながら、淵のたるみで目が止まる。

「ククゥ-ッ」と、確かな感触!
一瞬、心臓の高鳴りを覚える。
弧を描いた竿は、私とそれに親しみさえ感じさせてくれる。

「山女魚だ!」
それは、体に珠玉を散らしたようなサビの抜けきった非常に美しいものであった。
「まだ小さいなぁ-!」

一人、呟きながら 「早く大きくなれよ!」 と、流れに戻す。
そして、銀鱗をひるがえしながら、自分の居場所へと帰っていく。、
そんな、小さな出会いの出来る春の訪れである。

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