缶けり(春)

私の寝床に潜り込んでいた飼猫の”ミ-”ががさがさする音を聞き寝床からのっそりと抜け出して、台所へ駆けて行った。“ミ-”は妻の足元に纏わり付き、餌がほしいのか”ミ…

雲(春)

広いレンゲ畑に寝ころび、五月の風の薫りを楽しみながら空を見る。果てしない空に、何片かの雲が浮かんでいる。 私はまどろみながら雲に問いかける。 雲よ、お前はもくもくと湧いてきたかと思うと、いつの間にか消え去ってしまう。そし…

春一番(春)

雑木林に入ると、透き通った空をバックに木々の梢の先っぽが赤みを帯び早春の明るい日差しを浴びて眩しく輝いている。近寄って細い梢の先を手に取ると、冬の間固く閉ざされていた芽に、いくらか膨らみが感じられる。しかし、梢を渡る風に…

駄菓子屋(春)

いつも通る町の中に昔と変わらぬ風情の小さな駄菓子屋がある。五十づらを下げた「おっちゃん」が中に入るには幾らかの躊躇があった。しかし、通るたびに何時か覗いてみようと思っていたので思い切って入ってみた。 薄暗い店の中には、昔…

雑木林/エッセイを開設

雑木林/エッセイを開設しました。雑木林には春夏秋冬の幼い頃の懐かしい想い出を綴っています。今までに公開したエッセイの中からお気に入りのエッセイを改めて公開したいと思います。