老木の春(八重桜の想い出)(春)

「あの八重桜、どうしたかなぁ~。」「丁度今頃、咲き始めるんだよなぁ~。」そんなことを呟き、五月の風を受けながら車を走らせる。 周りの山々は淡い緑と言うよりも白に近い芽吹き色に輝き、斑に見える黒木山と眩しいくらいのコントラ…

早春(春)

自分の殻に「じぃ-っ」と閉じこもり長かった「冬」からの脱皮。なにもかもが歓喜にあふれ、躍動の季節の訪れである。「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 私の心は、早春の岸辺の枯れ葦の中にいる。「そぉ-っ」と竿を出す。…

田植え(春)

半世紀以上前(昭和30年後半)の田植えの想い出。今では田植えも田植え機械で植える時代。この頃は、部落中の数人の大人の女性の手を借りて一植、一植手で植えていた。私が中学生の頃の田植えの想い出です。 父と母は耕耘機に乗って先…

春の雪(春)

夕刻より、雨が雪に変わった。 昨日まで、五月下旬の陽気であった。 庭の白い木蓮は、樹一杯に白い花を着け、青空に眩しいほどに輝いていた。 いつもは、庭にある枝垂れ桜が花をつける頃、桜も開花するのだが、今年は桜の方が早かった…

太々神楽(その三) (春)

勇壮で迫力のある”岩戸の舞”を演じ終えたみっちゃんの父ちゃんは舞台の中央に立ち、激しい演技の為か肩で大きく息をして呼吸を整えている。タジカラオノミコトの面を付けた顔の顎からは汗が滴り落ちていた。第…

太々神楽(二)(春)

”トッピィ~ヒャラリィ~、トッピィヒャロ””シャーン、シャシャ、シャーン””ドーン、ドド、ドーン”拝殿では太々神楽が既に始まっていた。神々を崇める笛や太鼓、鈴の音色が入り乱れ、鎮守の杜はその賑わいにすっぽりと包み込まれて…

太々神楽(一)(春)

今年は例年になく、遅い梅と早い桜の開花がほぼ一緒となり、三月下旬ごろから両方の花を一緒に楽しむ事が出来た。この時期外れの現象は、今地球規模で問題となっているCo2ガスによる地球温暖化現象の一つの現れなのかもしれない。いわ…

桃源郷(春)

「梅、辛夷、木蓮、桃、桜・・・」今年は木々の装いが例年になく早い。庭の藤もたくさんの大きな蕾を付け始め今にも咲きそうである。 今年は草花や木々の花咲く時期が何処か狂っているようだ。何もかもが観測始まって以来の異常さである…

缶けり(春)

私の寝床に潜り込んでいた飼猫の”ミ-”ががさがさする音を聞き寝床からのっそりと抜け出して、台所へ駆けて行った。“ミ-”は妻の足元に纏わり付き、餌がほしいのか”ミ…

雲(春)

広いレンゲ畑に寝ころび、五月の風の薫りを楽しみながら空を見る。果てしない空に、何片かの雲が浮かんでいる。 私はまどろみながら雲に問いかける。 雲よ、お前はもくもくと湧いてきたかと思うと、いつの間にか消え去ってしまう。そし…