「裏見の瀧」
神橋から清滝方面に向かうと、右手に古河記念病院がみえてくる。
その先、荒沢川の橋の手前を右に曲がり、2キロほど行くと駐車場に着く。
そこから小鳥の声や荒沢のP音を聞きながら階段のある山道を荒沢渓谷沿いに登っていくと15分ほどで裏見の瀧に着く。
沢の橋から奥の方にダイナミックに流れ落ちる滝の景観は言葉では現せないほど雄大で素晴らしい。ただ残念な事に数年前に展望台まで木製の階段が出来てしまったが、便利ではあるが景観を十分に損ねてしまった事は否めない。
ここからその木製の階段を上っていくと展望台へと着く。滝の轟音とマイナスイオンを全身に浴びながら眼前の滝に暫し見惚れてしまう。
昔は、ここから岩伝いに滝の裏側を通る事が出来たらしいが、今は通る事も滝を裏から見ることも出来ない。
裏見の瀧は華厳の滝、霧降の滝とともに日光三大名瀑のひとつ。
滝の裏には不動明王が祀られている。これは1624(寛永元年)奥州の出羽三山から荒沢不動尊が迎えられ、天海大増正の命により、裏見滝に安置されたもの。男体山・太郎山大真名子山への信仰登山のための修行場で高さ45m幅2m落差19mの滝である。
芭蕉翁発句集の中には裏見の滝に関連した句があり
”暫時は瀧に籠るや夏の初” の発想となったのでは。
”ほととぎすうらみの滝のうらおもて”
”うら見せて涼しき滝の心哉”
裏見の瀧
(参考資料 隋想社編 郷愁の日光 石井敏夫絵葉書コレクションより)
「裏見の瀧」
日光神橋より西南一里半、字荒沢山の頂上に在り。斗出せる怪岩の上より落下すること十丈、幅三間、左右に相生、布引の二小瀑あり。傍らに不動の石像を安置し、又小庵あり。是より歩を進めて怪石の下に至れば瀑の背面より望むを得、故に裏見の名あり。その形状恰かも一匹の素絹を眼前に垂下せるが如く、又玉簾を隔てて日光を見るの奇観あり。凡そ我国瀑布多きも、未だかつてその背面より望むが如き絶奇の妙相は他に無比なるを以て、其の名頗る高し。
下野歌枕 勝田諸持
真葛はふ 路分来て二荒山
玉まく瀧のうらも見てけり
時鳥うらみの瀧のうらおもて はせを
雲水やかすまぬ瀧のうらおもて 桃鄰
(大日本名蹟図誌より)
裏見の瀧之図(一)裏見の瀧之図(二)(日光山志より)
(日光山志)
植田孟縉著/渡辺華山他画
文政8年(1825)序、天保10(1839)年に刊行された日光山の名勝誌を影印・複製する。開祖勝道上人の伝記等、東照宮以前の歴史も含め、東照宮の社殿関係や祭礼、美術工芸分野に関する記述、門前町の描写など、多岐にわたって日光の名所・風物を案内する。挿画には渡辺華山・葛飾北斎をはじめとする多数の著名画家が筆をふるっている。