奥の細道

又、清水ながるゝの柳は蘆野の里にありて田の畔に残る。
此所の郡守戸部某の此柳みせばやなど、折ゝにの給ひ聞え給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日此柳のかげにこそ立より侍つれ。

田一枚植ゑて立去る柳かな

曽良随行日記

廿日 朝霧降ル。辰中尅、晴。下尅、湯本ヲ立。ウルシ塚迄三里余。半途ニ小や村有。ウルシ塚ヨリ芦野ヘ二リ余。 湯本ヨリ総テ山道ニテ能不知シテ難通。芦野ヨリ白坂ヘ三リ八丁。芦野町ハヅレ、木戸ノ外、茶ヤ松本市兵衛前ヨリ左ノ方ヘ切レ、八幡ノ大門通リ之内(十町程過テ左ノ方ニ鏡山有)。左ノ方ニ遊行柳有。其西ノ四、五丁之内ニ愛岩(宕)有。其社ノ東ノ方、畑岸ニ玄仍ノ松トテ有。玄仍ノ庵跡ナルノ由。其辺ニ三ツ葉芦沼有。見渡ス内也。八幡ハ所之ウブスナ也。市兵衛案内也。スグニ奥州ノ方、町ハヅレ橋ノキハヘ出ル。