「あっ!猿っ!」
山際の道に突然二匹の野猿が下りてきた。
ふっくらとした冬毛に覆われ柔らかな日差しの中で輝いている。
餌を目当てに里まで降りてきたのだろう。車を止めると驚いた様子で山に入ってしまった。
覗いてみると木に登ってこちらを伺っている。つがいなのであろうか。
多分廃屋になった家の中にも入り込んで荒らしまわっているのだろう。
南摩川はこの辺から道からそれ真向かいの山際を流れている。
川べりの屋敷跡に植えられた孟宗竹に射し込む日差しに何故かしら生活臭を感じてしまう。
道沿いに少し行くと、薄暗い杉林を背にして一宇の古い薬師堂が建っている。
前側の戸板は外されたままで、薬師堂の中は薄暗く中央に祭られた祭壇には誰が供えたか少しだけの供物があるだけで、薬師堂の中は"がら~ん"として何もない。
外の板壁には去年の物と思われる秋祭りのポスターが破れたまま貼られていた。
手記上南摩にて Vol.06
maywind (2013年10月16日 16:33)