老木の春 2021

rouboku2021_04_19_001.jpg

「老木の春」を求めてお気に入りの場所へ3年ぶりに行ってきました。
栃木県宇都宮市の北外れ、高間木地区の鬼怒川の堤に咲く桜です。
丁度満開で、数人の人たちが桜を求めて訪れていました。

堤の北側には公園が整備されており、親水公園として親しまれているそうです。
南側には明治時代に鬼怒川を分流する為に掘られた「逆木洞門」の遺構が残っています。
今は、色々な木や花が植栽されて目を楽しませてくれます。

rouboku2021_04_19_002.jpg rouboku2021_04_19_003.jpg

その昔、ここの堤には桜が植えられ見事な桜並木でした。
今でも往時の盛隆を誇った桜並木の面影を見ることは出来ます。
しかし、今では老木となり果てた姿が数本見られるだけでした。(上右画像)

以前は、八重桜も数本ありましたが老木となって朽ち果て、今では数本だけが健気に咲き誇っていました。

rouboku2021_04_19_006.jpg

最近、堤の賑やかさを復活させようと元の桜並木の下の方に「御衣黄桜」を植栽したそうです。
「御衣黄桜」は、花びらが緑から黄色、そして、花の中心部が赤くなる珍しい桜だそうです。
先日、新聞などで紹介された為かこの珍しい「御衣黄桜」を見ようと訪れる人が多いそうです。

十数年後には、老木となった桜並木に代わって「御衣黄桜」並木になるのではないでしょうか。
また一つ、新名所が増えました。

rouboku2021_04_19_005.jpg rouboku2021_04_19_004.jpg

老木の春(八重桜の想い出)

「あの八重桜、どうしたかなぁ~。」
「丁度今頃、割き始めるんだよなぁ~。」
そんなことを呟き、五月の風を受けながら車を走らせる。
周りの山々は淡い緑と言うよりも白に近い芽吹き色に輝き、斑に見える黒木山と眩しいくらいのコントラストを作っている。
そして、水が張られた田んぼはまるで鏡でも置いたかのように山々の芽吹きを映し出している。
車を置いて想い出の場所へと行って見た。
堤の桜はすでに終わり、八重の老木は枯れ果てた姿で数本だけが残されていた。
枯れ始めた老木の根元からは数本の細い枝が出ていた。
そして、そこには数輪の八重が寂しそうに花を付けていた。
それは、まるで老いてゆく自分に残された全ての精力を使いきって咲いているかのようにも思えた。
そして、その健気な姿は次世代へ残そうとする生命力の強さをまざまざと見た思いであった。
その姿は、かつて八重桜並木に盛隆を誇っていた頃の自分を想い出しているかのようでもあった。
しかし、その面影はもうない。
(春の雑木林より)