雫(夏)

傘に雨の雫が落ちてくる。
初夏の雑木林に生い茂った木々は、天からの恵みを受けますます緑を濃くしている。
雨の潤いをたっぷりと含んだ土を踏みしめ、傘を打つ雫のリズムを楽しみながら雑木林の奥へと入る。

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そぼ降る雨の向こうには太いケヤキの大木が霞んで見える。
地面にしっかりと根を張った太い幹には、天の恵みが作った流れが幾すじも出来ている。
「ポトッ、ポトッ、ポトッ、・・・・・。」

見上げると、ケヤキの葉の先には今にもこぼれ落ちそうな雫が光って見え、後から後から際限なく落ちてくる。
スポンジを敷いたような苔に、今年芽生えたいとおしい新芽が一本、二枚の柔らかい葉を左右に大きく広げ、天からの恵みを美味そうに受け輝いている。

まるで、母からお乳を貰う赤子のようだ。
「シーン」と静まり返った雑木林の大きなケヤキのその姿は「早く大きくなれよ。」
と、赤子を諭しているように見える。

時折の風に大きく葉が揺れ、降り落ちる雫で雑木林は霞んで見えた。
雨の日の初夏の雑木林にはそんなドラマに行き会える。