小さい秋(秋)

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久しぶりに古里の雑木林に入ってみた。
小さいころ母と一緒に木の葉さらいをした場所だ。

夏草をかき分けながら奥へと入ってみる。
今は下草が生い茂り昔の様な面影は一つもなかった。

ただ、昔と同じように夏草の強い匂いが風にそよいでいた。
葉の隙間から晩夏の強い日差しがスポットライトの様に私に光を浴びせる。

奥のほうに、見覚えのある山桜の大木が見えてきた。
夏とはいえ林の中は薄暗い。

しかし、その大木の周りだけが何故か輝いて見える。
まるで光のシャワ-を浴びているようだ。

夏草をかき分け近づいていくと昔の記憶が一つ一つ蘇ってくる。
母と木の葉さらいをした事、友達と小鳥を捕った琴などが次から次へと私の頭の中を過っていく。

足元の夏草の下には古い切り株が多数残っていた。
切り株には、夏草に邪魔されながらもひっそりと逞しく生きている。

今年生えたばかりのクヌギが数本あった。
無事大きく成れるのだろうか。

私は、山桜に近寄り肌に手を当ててみた。
何故か昔感じたような温もりがあった。

今度は、淡いピンクの花が咲く頃会いに来て見よう。
戻りながら私に言い聞かせ、山桜を振り返る。

私の肩にひとひらの桜の葉が落ちてきた。
その葉は黄色く色づいていた。

「もうすぐ秋か。」
林の中は昔のままに静まり返っていた。