竹の子(春)

昭和30年頃」、ちょうど、「となりのトトロ」の舞台となった年代である。
いつもみるたびに、私の脳裏に焼き付いている風景が小間切れフイルム のように甦ってくる。

少し大きめのよれよれのランニングシャツ、だぶだぶの半ズボン、おやじのお下がり のくたびれた皮のベルト。
今思うと本当に懐かしく、昨日のように鮮明に甦ってくる。

私は片田舎育ちで今の時期になるとその頃の懐かしい遊びを思い出す。
昭和30年代といえば、たいした食料もない時代である。

学校から帰るとお櫃の中のごはんでおむすびを握り味噌を付けてよく食べたものだ。
「筍の皮」...

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中身は煮物にして食べるが、今考えればこれは皮の有効利用である。
家の裏に小川が流れており、たいがい何枚かの竹の皮が引っかかってい た。

今では考えられないが、ほとんどの家が川で野菜や食器などは洗っていた。
川から拾ってきた「筍の皮」の表の毛をきれいに取り、二つに折って 内側に梅干しをいれ包み込むようにする。

そして二つ折りにした表をしゃぶるのである。
初めは竹の生臭さが口に残るが、しゃぶっている間に中の梅が竹の皮にしみ出して甘酸っぱいような、何ともいえぬ味になってくる。

誰が一番早く竹の皮が赤くなるか競うのである。
今でも、やってみるが口が肥えているのか昔の味にはならない。

そんな昔の小学校の頃の「竹の皮」の思い出である。