どんぐり山(春)

田んぼの中に「どんぐり山」と私たちが呼んでいた山がある。
山と云うよりは周囲50m位の、高さ10m位の丘であった。

ちょうど、どんぐりの実の帽子を取ってそれをかぶせたような形である。
山には「しの竹」が密生していて、杉の木とクヌギの木が何本か立っていた。
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どんぐり山のてっぺんのクヌギの木の下には、「隠れ家」が作ってあった。
「しの竹」の藪を刈払い一畳位のところへ稲藁をすき、周囲を稲藁で囲った場所である。

学校が終わると、何人かで「隠れ家」へ遊びに行った。
遊びに行くときはいつも「肥後の守」をポケットに忍ばせ、切れ味を自慢しあっていた。

鉛筆を削るのもそれだったし、今のように咎められはしなかった。
刃を研ぐのも、指を切るのも自分持ちであった。

だから、それなりに刃物を使うル-ルというものをわきまえていたのかもしれない。
また、部落に一人は「ガキ大将」がいて、それらを統括していたので目立った問題など起こらなかったのかもしれない。

「隠れ家」へ行っては、そこで「しの竹」を細工して自慢し合った。
想いでに残るのは、「スギデッポウ」である。

「ミズデッポウ」を小さくしたもので、細い篠竹と編み物に使う竹の棒で作る。
杉の実をそこに入れ空気で飛ばすのである。

小切れの良い音がしてけっこう飛ばせた。
ときには人の頭などを狙ったこともあった。

また、木に登ったり、かくれんぼしたり、囮で鳥を捕ったりと昔のことであるから、遊びには不自由しなかった。
もう35年も昔のことである。

「どんぐり山」のクヌギの木はまだ立っているのだろうか。
雑木林のクヌギに出逢うたび昔を想い出す。