懐かしいエッセイ 老木の春

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桜

栃木県北部の桜の開花は、まだちょっと先のようです。
写真は2010年ごろ残雪の日光連山をバックに撮った桜並木です。
宇都宮市高間木地区の親水公園の土手には、昔植えられた桜並木が春爛漫と咲き誇っていました。

桜 桜

土手の所々に老木が数本残っており、今にも枯れそうな老木にも数輪の花が付いていました。

桜 桜

老木の春(八重桜の想い出)

「あの八重桜、どうしたかなぁ~。」
「丁度今頃、割き始めるんだよなぁ~。」
そんなことを呟き、五月の風を受けながら車を走らせる。
周りの山々は淡い緑と言うよりも白に近い芽吹き色に輝き、斑に見える黒木山と眩しいくらいのコントラストを作っている。
そして、水が張られた田んぼはまるで鏡でも置いたかのように山々の芽吹きを映し出している。
車を置いて想い出の場所へと行って見た。
堤の桜はすでに終わり、八重の老木は枯れ果てた姿で数本だけが残されていた。
枯れ始めた老木の根元からは数本の細い枝が出ていた。
そして、そこには数輪の八重が寂しそうに花を付けていた。
それは、まるで老いてゆく自分に残された全ての精力を使いきって咲いているかのようにも思えた。
そして、その健気な姿は次世代へ残そうとする生命力の強さをまざまざと見た思いであった。
その姿は、かつて八重桜並木に盛隆を誇っていた頃の自分を想い出しているかのようでもあった。
しかし、その面影はもうない。
(春の雑木林より)

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