山の分校 秋(エッセイ)

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上南摩にて

栃木県鹿沼市で建設中の南摩ダムを久々に訪れてみた。
建設中とは言ってもダムサイトの本体工事までには程遠く、今は山の中腹を通る県道の付け替え工事をやっている。
ここ上南摩へはカメラを持って2003年より通い続けている。
最近は、年に数回程度訪れるのみ。
上南摩は秋の様相で工区内を縦断する県道を北上する。
時間が有ったので、上久我の加蘇山神社方面へと向かう。
その途中、広場の奥にかつて分校であっただろう廃校になった小さな建物があった。
懐かしさのあまり、中を覗いてみた。
今は荒れ果てて何も無い。
割れた窓ガラスから見る光景に在りし日の想い出が過ぎる。

山の分校
妻と娘と連れ立って、秋の休日もみじ狩りに出かけた。
いつもの道は渋滞していたのでちょっと遠周りだが昔通った裏道を行くことにした。
「お父さん、止めて!」
娘が突然、指をさして言った。
見ると赤や黄色に彩られた山に囲まれるように、小学校の分校がひっそりと建っていた。
「ちょっと寄って行こう!」
車を降り校庭に入ってみた。
「いやぁ!懐かしいなぁ!」
私の子供の頃の校舎がそのまま残って居るではないか。
白いペンキで塗られた木の窓、そして何十年も風雨に耐えてきた杉の下見板は深いしわのように年輪を浮き出させていた。
窓に寄って中を覗いて見る。
机と椅子だけが新しい物になっているが、その他は昔のままである。
校庭の隅に目をやると、白い百葉箱が見える。
その隣には、昔のままの運動具小屋があり、校舎の前には古びた朝礼台が置いてある。

廃校

「お父さん来て!」
娘の呼ぶ方へ行くと古びた小さな机と椅子が置いてあった。
二人掛け用の机で、天板を上げると中が見えた。
私が小学生の頃使ったのと同じ机だろう。
娘が言った。
「お父さん、これ机なの!」
「お父さんが小学生の頃はこの机で勉強したんだぞ!」
小さな椅子に座ってみる。
良く見ると薄汚れた机の天板には、小刀で掘り込んだ傷や落書きが何箇所も残っていた。
娘は興味深げに見ていた。
校庭の周りには太い桜の木が何本か立っている。
葉はほとんど落ちてしまい、梢には葉っぱが数枚ぶら下っていた。
この光景は、一瞬、三十数年前にタイムスリップしたかのようだった。
「もう帰ろう!」
娘に言いながら車に戻る。
振り返ると分校の裏山は、カエデやウルシの赤、ブナや蔦の黄抜けるような空の青、まるで山全体が燃えているかのようだった。
(秋の雑木林より 2004年 記)

机の画像は写真ACより

閑話休題
栃木県鹿沼市上南摩地区で建設が進んでいる南摩ダムへは2003年からその進捗状況などを撮り続けている。
先日も行って来たばかりで、目にする限りではここ数年ほとんど変わっていない。
南摩ダム本体の工事はまだまだ先のようでダムサイトの工事が始まるのはあと数年は掛かりそうな木が摺る。
通い始めた頃から撮り続けて来た写真や手記がブログで公開してありますので興味がありましたら覗いてみて下さい。
トップの写真は、廃校になった鹿沼市立旧梶又小学校跡です。

ダムin栃木
ダムin栃木(旧)
南摩ダムにて
上南摩(写真集・手記)(Adobe Flashで作成)

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